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杉森昌武を読め!(文庫本「ゴルゴ13」解説)⑨

杉森昌武を読め!(文庫本「ゴルゴ13」解説)⑨


以前やってたブログで文庫版「ゴルゴ13」の巻末で解説をしていた杉森昌武という方のゴルゴ愛...いや、ゴルゴ原理主義者と言うべき文章を面白がっていたのだが、ここで改めて紹介いたします。

俺は解説を読みたいがために文庫版「ゴルゴ13」を読んでいるのかもしれない。
全文紹介するぜ!
は自分の脚注です。

怒られたら消すぜ!
でも、読もうぜ「ゴルゴ13」!←と言っておけばOKな気がして...。
(ここまでコピペ)
2019/01/07
杉森昌武を読め!(文庫本「ゴルゴ13」解説)⑧
以前やってたブログで文庫版「ゴルゴ13」の巻末で解説をしていた杉森昌武という方のゴルゴ愛...いや、ゴルゴ原理主義者と言うべき文章を面白がっていたのだが、ここで改めて紹介いたします。 俺は解説を読みたいがために文庫版「ゴルゴ13」を読んでいるのかもしれない。 全文紹介するぜ!※は自分の脚注…




杉森昌武を読め!(文庫本「ゴルゴ13」解説)⑨


第9巻 解説 杉森昌武


長年『ゴルゴ13』を愛読していると、いつの間にかいっぱしの国際通になっている自分に気がつく。
世界どころか、日本の政治、経済、社会といったニュースにもさほどの関心を持たない私だが、ゴルゴのおかげで、そうしたものには、さまざまな背景、人間模様、利害特質、政治的経済的な思惑などが、複雑怪奇に絡み合っているということを知るようになった。
たとえば湾岸戦争で、なぜ当時のブッシュ政権はイラク攻撃にあれほど執着したのか、そして息子のブッシュも、どうしてイラクと戦争したがるのか、何となく、背景が読めるようになった。
世界で起きているさまざまな出来事には、表面に出てこない、人間臭い背景が必ずある。
『ゴルゴ13』を読み続けて、私はいつしかそう確信するようになった。
『ゴルゴ13』はフィクションとは言っても、実にリアルな世界を描いている。
イギリス紳士がどういった信条で動くのか、カトリックの神父が案外世俗的な事柄に絡んでいる存在であること、KGBのスパイが最も恐れているのは、敵よりもクレムリンであること、ダイヤモンドの高値はシンジケートの徹底した価格操作によって維持されていること、それにも次第に価格破壊の波が押し寄せていること、などなど。
これらはほんの一例に過ぎないが、ゴルゴで描かれる世界は、時としてノンフィクションそのものである場合が多い。
世界の真実の姿を知るには、ゴルゴは何にもまさる教科書なのである。



【第40話/マニトバ】
背後に近寄る者に対して反射的に攻撃してしまう、というゴルゴの習性が、思わぬ展開を呼ぶ。
危険を避けるためのプロとしての本能なのだろうが、そのせいで逆に危険な目に遭うことも一度や二度ではない。
この習性、何とかならないのだろうか?
とはいえ、ゴルゴにとっては、警察に逮捕されるくらいのことは、大した危険ではないのだろう。
それに比べれば、背後に音もなく近寄る者の存在の方がはるかに危険だ。
一瞬の躊躇が即、命取りとなる場合もある。いろいろとトラブルの種になりやすい。
“困った習性”ではあるが、万が一の命の危険を回避するという点では、やはり不可欠な本能というべきだろう。
ところで、ゴルゴはきわめて無口な人間だが、時々結構洒落たことを言う。
この作品中で言えば、「ボルシチを食べるのは、夜にきめている」というセリフが、まさにそうだ。
これはなかなかに応用できるセリフである。
明るいうちから女性に求められ、まだその気になれない場合に、是非ためしてみよう。
ただ、その結果として夜になってもボルシチにありつけなくなってもそれは知らないが。
また、初対面の相手に「その……へたくそなマッサージガールは?」とは、少々失敬な気もするが、ゴルゴにしてみれば、マッサージガールのふりをしている諜報部員の正体など最初からお見通しなのである。
ゴルゴに偽装は通じないという好例であろう。
さて、KGBとカナダ公安諜報部から同じ依頼を受けたゴルゴ。
「……これはちょっとかわったケースになった……」と言いつつ、報酬の二重取りをしないところは、さすがに一流のプロである。
こういうところは、私ごときには到底真似できそうもない。
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【第41話/そして死が残った】
マニラの飛行場でタラップを降りている時、自分の前にいたアメリカ人女性が狙撃された。
女性の異変に気づいた瞬間、ゴルゴは、ダッとその場から跳躍した。
銃弾が貫通して自分に累が及ぶことをとっさに避けようとしたのか、標的が自分だと判断して、第二弾が襲ってくる前に退避行動を取ったのか、いずれにしても、一瞬の判断であり、いかにゴルゴが常に危険を回避することに集中しているかをまざまざと見せつけてくれる場面である。
ただ、ゴルゴが運がいいということも事実だ。
狙撃者の腕がもっと確かだったなら、いかに本能的な危険回避力があったとしても、この場合、ゴルゴは命を落としていただろう。
それが分かっているから、自分の命を狙った相手に対するゴルゴの反撃ぶりはすさまじい。
ホテルを襲いに来た三人組の一人を感電死させ、仲間にその死体を高所から捨てさせ、さらに一人を無造作に突き落として、一人だけを残してボスの居所を吐かせようとする。
標的レネ・ガルシアの居所を教えてくれた陳柳石が、ゴルゴの情報をガルシアにも売ったことを知ると、陳を拉致して敵の前に放り出し、ハチの巣にさせてしまう。ビジネスルールに厳しいゴルゴとはいえ、自分の命に関わる情報を金で売った陳に対して、絶対に許さないという不退転の決意が感じられる。
ゴルゴの手から逃れるため、警察の留置場に逃げ込んだレネ・ガルシア。
だが、ゴルゴはガルシアの裏をかき、自ら保釈金を積んでガルシアを釈放させ、そして射殺。
この回のゴルゴはまったく、容赦なく厳しい。
なお、フクバラハップ(フク団)は、作品中でも触れられている通り、第二次世界大戦中に、日本軍を相手にゲリラ戦を展開した、実在の民族団体である。
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【第42話/女王陛下の憂鬱】
タイトルは「女王陛下の憂鬱」だが、エリザベス女王が登場してどうかするという物語ではない。
MI6のヒューム部長のセリフが、タイトルの由来である。
彼らがいかに愛国心に富み、王室を敬愛しているかがうかがえる作品といえよう。
ゴルゴには、警察や敵組織などに捕らえられて拷問を受けるということが結構多い。
ゴルゴほどの者であれば、そうなる前に回避する手立てがいくらでもあるようにも思うのだが、案外あっさり捕まったりする。
そして過酷な拷問を受けても一切何も言わない。
まさか、楽しんでいるのではないだろうし、自分がどこまで耐えられるか見極めようというわけでもあるまい。
ひょっとして、これも訓練のうちなのか?
それはともかく、手足を拘束されて拷問を受けていても、相手の一瞬のスキをついて、ゴルゴは脱出する。
どんな相手にも必ず油断が生ずる瞬間があるということを、彼は熟知しているのだ。
ところで、最後のシーン。
ヒュームの願いを聞いてモデル・プレーンを撃ち落とすゴルゴ。
しかし、報酬を受け取らずに去っていく。
「な、なぜ報酬をもっていかなかったのでしょうか?」と不思議がるMI5のブレストン課長に対して、「あの男にしては……けじめの仕上げをしたにすぎないのだろう……」と答えるヒューム。
まあ、そういうことなのだろうが、だったらゴルゴはどうして、スパイ一味を始末した時にモデル・プレーンも撃ち落としてしまわなかったのだろうか。
ヒュームやブレストンたちが駆けつけ、モデル・プレーンに気づいても誰も撃ち落とせない段階になってから、自分の射撃の腕を見せつけて去ったとしか考えようがないが、もちろんそんな邪推をしてはいけないということは、私がここで改めて述べるまでもないことである。
このゴルゴの矛盾点やゴルゴには合わない行動を杉森さんは指摘するが「ゴルゴなりに考えがあるんだからお前ら突っ込むな!絶対に突っ込むなよ!」とダチョウ倶楽部ばりに言ってる様に取れるのは俺だけか)
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【第43話/GATE IN】
この作品が掲載されたのは、1971年の6月である。
そしてその舞台となったのは、ちょうど一年前の1970年6月3日、イギリスのダービー当日である。
このダービーを制したのは、ニジンスキー、鞍上は天才騎手レスター・ピゴット、これは歴史的事実である。
ニジンスキーはこの年、イギリス競馬の三冠レースである、二千ギニー(日本の皐月賞に相当)、ダービー(日本でもダービー)、セントレジャー(日本の菊花賞)を制した名馬で、引退後は種牝馬としても活躍した。
余談ながら、日本で活躍したマルゼンスキーという馬は、母親がイギリスで受胎したニジンスキーの子で、当時は「持ち込み馬」と呼ばれ、誰もが最強馬と認めながら三冠レースへの出走権を与えられないまま、デビュー以来8戦全勝で引退せざるを得なかった。
さて、ダービーで大本命のニジンスキーにトラブルを起こし、一攫千金を目論むビクター・モーガン一味。
自分たちがゴルゴのターゲットとなっていることなど夢にも知らない彼らは、ゴルゴに仕事を頼もうとする。
もちろんゴルゴが引き受けるわけがない。
ただ、依頼の順番が逆になっていたら、どうなっていただろうか。
他にも狙撃手を用意しているなどという条件では、やはり絶対引き受けることはなかったと思われる。
狙撃者の一人が言う「射撃で一番むつかしいのは、わざと的をはずして撃つことなんだ!」は名言だと思う)
杉森昌武を読め!(文庫本「ゴルゴ13」解説)⑨

それにしても、にべもなく袖にされた上に、わけのわからないまま殺されてしまったモーガン一味は、何とも哀れとしかいいようがない。
このコマ、同じ構図でもう一コマあれば「美味しんぼ」のラーメン三銃士みたいになったのに!)
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あと、モーガン一味がゴルゴ伝説を語っているのが興味深い。
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